創業者との伴走ストーリー / オーツー・パートナーズ 代表取締役社長 松本晋一 インタビュー
「創業者との伴走ストーリー:Side by Side Story」では、みらい創造インベストメンツが支援するスタートアップの創業者たちが、いかにして事業として形にしていくのかを、リアルなエピソードを通じてお届けします。
今回は、「日本の製造業を本気で良くしたい」という熱意を胸に、現場起点の変革を支援し続けるオーツー・パートナーズ株式会社 代表取締役社長 松本晋一様にお話を伺いました。エンジニアリングチェーンに特化した“実践型コンサルティング”で大企業のみならず、地域の中小企業の成長にもこだわり、地方に本店を構える企業を40社、100億円規模、あるいは株式公開へと導きたいとする挑戦、その原点と構想に迫ります。

製造業への使命感を胸に起業へと歩み出した原点
――はじめに、これまでのご経歴と、起業に至るまでの経緯をお聞かせください。
特別な経歴というわけではないんです。大学は二浪して早稲田に入り、卒業後は旭化成に入社しました。そこでは1年だけ働いたんですが、その1年でいわゆる「社内記録」を塗り替えるような成果も出して、ちょっと会社を騒がせた存在だったかもしれません。とはいえ、いろんな想いがあって辞めて、次に入ったのが製造業に特化したITソリューションを扱う外資系の会社でした。
そこでは、年齢や肩書きに関係なく実力で勝負する文化があって、性に合ってたんでしょうね、また結果を出せた。仕事を通じて多くの製造業の現場の方々と出会い、「将来的には製造業に貢献したい」と思っていた学生時代のぼんやりした志が、だんだん形を持ち始めました。お客さんから「松本さんが独立するなら、うちが最初の顧客になるよ」と言っていただけることもあって、自然と独立の道に進みました。
でも、実を言うと「いつか起業する」という気持ちは中学生のころから持っていたんです。ルールに疑問を持ちやすい子どもだったんですよ。「なんでダメなの?」と聞くと、「ルールだから」としか返ってこない。だったら自分でルールを作れる立場になればいい、と思ったのがきっかけでした。社長になれば、自分の信じる価値観で会社を動かせる。それが広がれば、もっと幸せな社会ができるんじゃないか。そんな風に考えていました。若かったからこそ持てた妄想かもしれませんが、それが自分の原点なんだと思います。
――「日本の製造業を本気で良くしたい」と強く思うようになった背景には、どのような原体験があったのでしょうか?
大学時代、バックパッカーとして訪れたインドでの経験が大きな原点です。現地の人々は冷蔵庫や洗濯機のない生活をしていて、「いつか日本の電化製品を買うのが夢だ」と目を輝かせながら語ってくれました。中でも印象的だったのは「壊れない松下の洗濯機は最高だ」と語る人の言葉。その瞬間、日本が世界から尊敬されている理由の多くが、製造業の技術力にあることを強く実感しました。
なぜ日本は経済的に豊かなのか。その答えは、戦後の復興期から外貨を稼ぎ続けてきた製造業の存在にあると、旅の中で腑に落ちました。将来、自分の子どもや孫の世代が同じように豊かさを享受できるためには、今を生きる私たちがその基盤を維持・発展させなければならない。その想いが、製造業に向き合う今の原動力となっています。

現場起点の実践知で企業変革を導く独自のアプローチ
――オーツー・パートナーズのコンサルティングは、他社と何が違うのでしょうか?
名刺交換して少し話すと、多くのお客様がその場でオーツー・パートナーズのことを検索されるんです。そして「こういう会社、他にないですね」と言ってくださる。よく言われるのは「オーツー・パートナーズさんってコンサルっぽくないよね」という言葉。多くのコンサル会社は“あっち側の人”という印象を持たれがちですが、私たちは“こっち側”、つまり製造業の現場と同じ空気を吸ってきた人間の集まりなんです。
メンバーの大半が実際に製造業で現場経験を持ち、かつITやAIにも強く、コンサルとしての視点も持っている。業務の深い理解×テクノロジーの知見×変革を導くコンサル力、この三刀流を強みにしています。単に理屈でなく、実際に使える解決策を提供できるのが私たちの特徴です。
さらに大きいのは、自分たち自身が経営を経験していること。かつて金型メーカーやAIスタートアップを経営し、売上や利益責任をリアルに背負ってきた。だからこそ、外から口出しするだけではなく、「当事者目線」で一緒に悩み、汗をかく。そこが他のコンサル会社とは決定的に違う点だと思います。
――オーツー・パートナーズが提唱する「企業変革のインフラ」とは、どのような仕組みなのでしょうか?
私たちオーツー・パートナーズは、日本全国に「GCT(グローバル・コア・トップ)」企業を数多く生み出していくことをミッションに掲げています。GCTとは、特定の市場において独自の強みと戦略を武器にグローバルで勝ち切る企業体のこと。これは中小企業だけでなく、大企業の一事業部門であっても該当します。つまり、規模に関係なく、自社のコア事業を磨き上げ、その分野で世界トップを狙う。そんな企業が各地に点在することで、日本全体の産業構造に新しい活力が生まれると考えています。
その実現の鍵は、「下請け構造」の転換にあります。いまの製造業の多くは、大企業を頂点としたピラミッド型の構造が前提となっていますが、真の価値やイノベーションはむしろ一次・二次・三次の中小企業が持っている部品や素材技術から生まれていることが少なくありません。私たちは、その“価値の源泉”となる中小企業をGCTに育てることで、仕事や資金、人材の流れを「大から小」ではなく、「小から価値を創る」方向にシフトさせたいと考えています。
この構造変革を可能にするのが、私たちが掲げる“企業変革のインフラ”です。コンサルティングという枠を超えて、組織・人材・技術・戦略すべてを再設計し、持続的に勝てる企業体へと伴走する体制を全国に張り巡らせていく。その象徴的な目標が、「地方に本店を構える企業40社を、100億円規模へと導く」挑戦です。
この“40社”という数値は、単なる目標ではなく、変革の波を起こすための現実的な突破口です。私たちが支援する企業の多くは、売上数十億から数百億円の中堅製造業。地域経済の中心を担いながらも、外部の知見や支援を得る機会が限られているからこそ、私たちが本気で伴走する価値がある。そうした企業が変革に成功し、自走する姿を見せることができれば、周囲の企業も一歩を踏み出すきっかけになる。40社の変革が、やがて産業全体を動かす波になる。それが私たちの目指す未来です。

みらい創造インベストメンツ 岡田(右)
最も苦しい瞬間に寄り添った伴走支援
――みらい創造インベストメンツとの出会いと、伴走支援について印象的なエピソードがあれば教えてください。
最も印象的だった出来事の一つは、やはりコロナ禍の混乱期です。あのとき、グループ全体の借入は20数億円、売上は約30億円規模。数字だけ見れば「これ倒産するんじゃないか」と周囲が心配してもおかしくない状況だったと思います。でも、当の私は意外と冷静で(笑)。というのも、それまで積み上げてきた手応えがあったし、何より自分の中で「ここで変えるしかない」という覚悟が芽生えていたからです。結果的に私たちは、グループを解体してO2単体で再出発する道を選びました。
きっかけになったのが、みらい創造インベストメンツの岡田さんとのやりとりの中で「事業を手放す決断をするのも一つの道だ」という言葉をもらったこと。それまで私は経営判断について、誰かに答え合わせをするような気持ちで相談していました。でもあのときは違いました。私の中にあった複数の選択肢の中から、岡田さんがストレートに「こうだと思う」と言ってくれたことで、迷いが晴れ、覚悟が決まった。
答えは一つじゃなくて、自分がどう生きたいか、どんな世界をつくりたいかで選ぶべきだと、再認識した瞬間でもありました。お付き合いも長いですし、岡田さんは私の性格も価値観もわかってくれている。その上で出してくれた言葉だったからこそ、腹落ちしたんだと思います。同じ時代を生きる経営者として、悩みの温度感や選択の重みを共有できる関係であることが、本当にありがたいですね。
――最後に、メッセージをお願いします。
私たちの社名には、「なくてはならない存在になりたい」という願いを込めています。それは一時的な話ではなく、100年、200年、さらにその先の時間軸の中で、社会にとって本質的な存在であり続けたいという想いから名づけました。
今の時代は、生成AIに象徴される技術革新と、地政学的な不安定さが交錯する混沌の中にあります。多くの人や産業が、どこに進めばいいのか迷っている。私たちは、その状況に対して「この方向に進めばきっと皆が幸せになれる」と、方向性を示していきたいと考えています。
そして、その実現に必要な人や組織、テクノロジーを繋ぎ、迅速かつ低コストで支援を提供する。私たちは“酸素”のように、目立たなくても確かに機能し、触媒(カタリスト)としてチーム全体の成果を引き出す存在でありたいと思っています。製造業の現場で、そんなうねりの中心に立ち続けることが私たちの願いです。

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2 thoughts on “日本の製造業再興の鍵となる、中堅企業の変革を支える「企業変革のインフラ」”
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